あなたにとっての「光」

風もない春の新緑の森で、夜が明けるのを待ちます。小鳥やカエルも静かにその時を待っているようです。明け方の冷え込みがピークをむかえるころ、空全体が明るさを取り戻します。いつの間にか、鳥たちがさえずり始めています。明るくはなっていても気温は上がらず、暗いときよりも寒さを感じます。

そして、ようやく陽射しが木々を照らします。木々、湖沼の水面が輝きだし、色のある世界がよみがえります。木洩れ日は冷え切った身体を奥深くから温めてくれます。太陽の光がとても愛おしく、ありがたく感じる時間です。朝日のまぶしさと温かな心地よさを与えてくれる光につつまれ、意図を必要としない至福の瞑想を体験することができます。

植物に私たちと同じような感覚があるのであれば、太陽の光を受けた植物はどれほど心地よいのかと思います。

植物は太陽の光を純粋に求め、幹を伸ばし、空間に枝を拡げます。森のいたるところにある植物が、太陽という一点からの光を求めます。時間により、季節により照射する確度を変える光は、高く広く茂った木の枝のすき間から、地面に生える植物にも光を届けます。

光は、一つの植物にとっては求めるものであり、その求めた結果がその植物の姿です。光を求めるという目的が、植物のかたちをつくったのです。

植物にとっての光を考えるとき、私たちにとっての光とは何かという問いが思い浮かびます。自分を導き、生きるエネルギーを与え続け、欲してやまないものとは何か。

それは、自分の人生をかけて求めるビジョンなのかもしれません。

ビジョンを持つ人は、そのビジョンを道しるべとして、ビジョンに導かれ、ビジョンを見続けることによってエネルギーを得ることができます。それは、植物が太陽の恩寵を受けるように、私たちに生きる希望とエネルギー、そして知恵を与えてくれることでしょう。

森のなかで空を見上げ、こころの奥にあるビジョンに光をあててみましょう。

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